「出産してから腰痛がひどい」とお悩みのかたも多いでしょう。子育てをしていると、肩や腰に負担がかかってしまう動作が多いものです。日常生活に支障が出ないよう、腰痛の対策を考えましょう。
本記事では、子育て中に起こる腰痛のおもな原因や対処法を紹介します。痛いときの相談先も紹介しますので、ぜひ参考として内容をご確認ください。
子育て中に起こる腰痛のおもな原因
腰痛を抱えながらの育児で、きつい思いをしているかたも多いでしょう。子育て中に腰痛が起こるおもな原因には、次のようなものが考えられます。
- ホルモンの影響による骨盤の歪み
- 体重の増加
- 不自然な姿勢
- 筋肉の凝り
- 腹筋の低下
原因に心あたりがあるかたも多いでしょう。おもな原因について、それぞれどのようなものか紹介します。
ホルモンの影響による骨盤の歪み
子育て中の腰痛には、ホルモンの影響が原因として考えられます。妊娠すると分泌されるホルモンが「リラキシン」です。リラキシンには、靭帯を緩和し、骨盤を緩める働きがあります。その結果として、骨盤が歪んで痛みが出るという仕組みです。
リラキシンは妊娠2~3か月ころから産後1か月程度まで分泌されます。
体重の増加
子育て中の腰痛は、体重の増加も原因のひとつです。体重増加によって、肥満になっているなら、腰痛が起こる可能性があります。なぜなら、体重が増加すると腰には多くの負担がかかってしまうためです。
立つ・座るといった動作による腰への負担は、体重の2.5倍ともいわれます。そのため、体重が増加すると腰への負担も大きくなってしまうのです。
体重の増加によって負担がかかるのは、腰だけではありません。膝関節や股関節などにも大きな負担がかかってしまいます。
不自然な姿勢
子育て中の腰痛は、不自然な姿勢も原因のひとつです。妊娠していなくても、不自然な姿勢を続けていると腰痛につながるでしょう。子育て中なら、次のような動作によって、腰に負担がかかることがあります。
- 抱っこ
- おむつ替え
- ミルクづくり
特に前かがみの姿勢には注意が必要です。前かがみだと腰に負担がかかって痛みを引き起こします。
筋肉の凝り
筋肉の凝りも腰痛を引き起こす原因です。子育て中は、赤ちゃんの抱っこや授乳などで、腰の筋肉に負担がかかって、柔軟性が失われ、凝りが生じます。筋肉が凝った状態になると、痛みを引き起こす物質が産生される仕組みです。
- 長時間同じ姿勢を続けている
- 特定の筋肉ばかり使っている
上記のような状態は、筋肉の凝りにつながり腰痛を引き起こしますので、注意しましょう。
腹筋の低下
産後、子育てをしていて腰痛があるなら、腹筋の低下も原因として考えられます。姿勢を保ったり、内臓を支えたりする大切な役割を持つのが腹筋です。妊娠すると、子宮が膨らんで腹筋が引き延ばされます。さらにホルモンの作用によって起こるのが、腹直筋離開という状態です。
腹直筋離開とは、腹直筋が左右に離れてしまう状態を意味します。腹直筋が左右にわかれると姿勢を保つのが難しくなり、腰痛につながる仕組みです。
子育て中の腰痛を改善する方法
さまざまな原因で引き起こされる子育て中の腰痛ですが、改善する方法があります。改善する方法とは、次のようなものです。
- 安静に過ごす
- 腰痛ベルトやコルセットを使う
- 正しい姿勢を意識する
- ストレッチをする
4つの方法を紹介しますので、それぞれどのようなものかチェックしてみましょう。
安静に過ごす
産後6~8週までの産褥期は、なるべく無理をせず睡眠を取り、安静に過ごしましょう。「子育て中で安静は難しい」と感じるかもしれませんが、体を休めることも大切です。
産後3~4週間ごろになると、簡単な家事ができるようになります。だからといって無理をしてしまうと体に大きな負担がかかるため、注意が必要です。
体力がもとに戻るには、3か月~1年ほどかかります。赤ちゃんのためにも無理をせず、まずは体を休めましょう。
腰痛ベルトやコルセットを使う
腰痛がひどいときは、腰痛ベルトやコルセットを使ってみましょう。腰痛ベルトやコルセットをつけると、痛みが楽になる可能性があります。
ただし、市販のベルトやコルセットは、体に合わないかもしれません。整形外科を受診して、自分の体に合ったものを使用するようにしましょう。
正しい姿勢を意識する
腰痛で悩んでいるのなら、普段からなるべく正しい姿勢を意識しましょう。常に正しい姿勢を意識するだけでも、腰回りの筋肉は鍛えられます。
子育てで忙しいなか、病院に行くのは難しいというかたも多いのではないでしょうか。正しい姿勢を意識するだけなら、いつでもどこでも、無理なくできます。
「つい猫背になってしまう」というかたは、常に背筋を伸ばすよう意識してみてください。
適度に体を動かす
腰回りに筋肉をつけるために、適度に体を動かすことも効果的です。適度に体を動かすと、ストレスの解消にもなります。ストレッチやウォーキングなど、軽く体を動かしてみましょう。
ただし、産褥期は安静を優先してください。運動を開始してもよい時期は、人によって違います。医師に相談したうえで、無理のない範囲で体を動かすようにしてください。
腰痛がつらいときの相談先
「腰痛は誰にでもあるもの」と我慢しているかたも多いのではないでしょうか。痛みが強いなら、我慢し過ぎはNGです。
腰痛がつらいなら、次のような場所で相談してみてください。
- 病院
- 整骨院
- 鍼灸院
それぞれについて紹介します。
病院
腰痛がひどいときは、まず病院を受診しましょう。
病院では医師の判断によりレントゲンやMRIを撮影します。何らかの病気が原因で腰痛がひどいのかもしれません。病気が原因なら適切な治療が必要です。
まずは病院を受診して検査を受けてみてください。
接骨院
腰痛なら、接骨院で相談するのも方法のひとつです。病院を受診して、重症でなければ接骨院に切り替えるのもよいでしょう。
ただし、接骨院での施術では、保険適用にならない場合があります。費用は事前に確認してみましょう。
鍼灸院
腰痛では、鍼灸院を利用する方法もあります。
鍼と聞いて、「痛みがあるのでは」と不安なかたも多いのではないでしょうか。痛みの感じ方には個人差があるものの、鍼の施術には、注射のような強い痛みはありません。なぜなら、鍼の施術では、髪の毛のように細い鍼を使っているためです。
お灸では、もぐさを燃やして熱で体のツボを刺激します。
鍼灸の施術が保険適用になるかは、鍼灸院や症状によって違うため、確認してみましょう。
産後は椎間板ヘルニアや坐骨神経痛にも注意
産後の腰痛には椎間板ヘルニアや坐骨神経痛なども考えられます。それぞれ、どのようなものなのか見ていきましょう。
椎間板ヘルニアとは?
椎間板ヘルニアとは、椎骨と椎骨のあいだにある椎間板が変形して飛び出した状態です。椎間板の一部が周囲の神経を圧迫して、腰・足に強い痛みやしびれなどの症状が生じます。
椎間板ヘルニアの場合、治療法は保存療法と手術療法の2種類です。保存療法を行っても落ち着かない場合は、手術を行う場合があります。
坐骨神経痛とは?
坐骨神経痛とは、腰から足にかけて痛みやしびれが出る症状のことをいいます。坐骨神経痛の原因として多いものが、椎間板ヘルニアです。高齢の場合は、腰部脊柱管狭窄が原因で坐骨神経痛が起こる場合があります。
子育て中の腰痛は対処が必要
骨盤の歪み・体重の増加・不自然な姿勢など、子育て中の腰痛にはさまざまな原因があります。腰痛は長引きがちですので、早めの対処が大切です。産後すぐに腰痛があるのなら、まずは安静に過ごしてみてください。
思うように時間をとるのは難しいかもしれませんが、子育て中の腰痛がつらいなら病院の受診も検討しましょう。
この記事の監修者
田園調布 長田整形外科
院長 長田 夏哉
【診療科目】
整形外科、リハビリテーション科、一般内科、自然療法、KITAサウンドヒーリング、ウェルネスプログラム
【経歴】
平成5年 日本医科大学卒、慶應義塾大学 整形外科学教室入局、慶應義塾大学病院、済生会神奈川県病院、大田原赤十字病院(現 那須赤十字病院)、川崎市立井田病院、川崎市立川崎病院 等にて勤務
平成17年 川崎市立川崎病院 医長
平成17年9月 田園調布 長田整形外科 開設
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