葉酸は、妊活・妊娠中は積極的な摂取が推奨されている栄養素です。しかし葉酸の摂り過ぎには注意しなくてはなりません。本記事では、葉酸の摂り過ぎによる影響を解説します。
また、葉酸が不足した場合の症状や摂取推奨量も紹介しますので、ぜひ内容をご覧ください。
葉酸は摂り過ぎに注意
葉酸はビタミンB群に属する栄養素で、植物に多く含まれています。葉酸のおもなはたらきは下記のとおりです。
- 赤血球の形成を助ける
- DNAやRNAの合成を促進
また、妊娠前から妊娠初期にかけて葉酸を十分に摂取することで、胎児の先天異常である神経管閉鎖障害のリスクを減らすことができます。
日本人の食事摂取基準(2020 年版)において「食事性葉酸の過剰摂取による健康障害の報告は存在しない。」との記載があります※1。しかし食事以外、たとえばサプリメントなどから葉酸を摂取した場合、過剰摂取となりやすい点に注意が必要です。とくに人工的に合成された葉酸は体に吸収されやすいため、より過剰摂取につながるおそれがあります。詳しくは後述しますが、サプリメントなどからの葉酸の過剰摂取による発症を防ぐために、葉酸には耐容上限量が設定されています。
葉酸の1日あたりの耐容上限量について、一部の年齢層を抜粋したものが次のとおりです。
年齢層 | 耐容上限量 |
---|---|
18~29歳 | 900μg |
30~49歳 | 1,000μg |
葉酸サプリを飲む場合は、耐容上限量をオーバーしないよう注意しましょう。
葉酸を多く含む食べ物・飲み物
摂り過ぎを防ぐためには、どのような食べ物・飲み物に葉酸が多く含まれているか知っておくことも大切です。そこで、葉酸を多く含む食べ物・飲み物について見てみましょう。
100gあたりの葉酸の含有量は次のとおりです※2。
食材(100g) | 含まれている葉酸の量 |
---|---|
焼きのり | 1,900μg |
抹茶 | 1,200μg |
鶏レバー(生) | 1,300μg |
牛レバー(生) | 1,000μg |
豚レバー(生) | 810μg |
ウナギ(肝) | 380μg |
生ウニ | 360μg |
青のり | 270μg |
枝豆(ゆで) | 260μg |
芽キャベツ(ゆで) | 220μg |
アスパラガス(ゆで) | 180μg |
すじこ | 160μg |
葉酸の含有量が特に多いのが、焼きのりやレバーです。焼きのりを100g食べるのは難しいため、食べすぎてしまうリスクは少ないでしょう。
気をつけたいのが、100gで耐容上限量を大幅に超えてしまうレバーです。レバーは鉄分が豊富であるものの、ビタミンAも多く含んでいます。
ビタミンAは、妊娠3か月までの段階で継続的に摂取してしまうと、胎児の臓器形成に影響するとされる栄養素です。葉酸・ビタミンAの過剰摂取を防ぐためにも、妊娠中はレバーを食べ過ぎないよう気をつけましょう。ブロッコリー・ほうれん草などの野菜にも葉酸が含まれています。サプリも含め、トータルで見て耐容上限量を超えないよう注意してください。
葉酸の過剰摂取・不足で見られる症状
葉酸は薬ではないため、副作用はありません。ただし過剰摂取は過敏症につながるおそれがあるため、注意が必要です。過剰摂取・不足においてみられる症状についても解説します。
どのような症状があるか、チェックしてみましょう。
葉酸の過剰摂取で見られる症状
葉酸は水溶性ビタミンのため、通常であれば不要な分は尿として排泄されます。しかし慢性的に過剰摂取した場合、次のような症状が出る場合があります。
- 発熱
- じんましん
- かゆみ
- 呼吸障害
また、妊娠中の過剰摂取により、生まれた赤ちゃんの小児喘息のリスクが高くなるという報告もあります。よって、葉酸の過剰摂取は避けるようにしましょう。
葉酸の不足で見られる症状
妊活・妊娠中の女性だけでなく、葉酸は健康に過ごすために必要な栄養素です。葉酸が不足することによってリスクが高まる疾患として、下記が挙げられます。
- 巨赤芽球性貧血
- 精神の不安定
- 動脈硬化
それぞれの概要について解説します。
巨赤芽球性貧血
巨赤芽球性貧血とは葉酸やビタミンB12が欠乏することによってDNAの合成が阻害され、異常な巨赤芽球が産生される疾患です。巨赤芽球性貧血には次のような症状があります。
- 動悸
- 息切れ
- 疲労感
葉酸は赤血球の生成にかかわる重要な栄養素のため、葉酸が不足すると赤血球の数が減少し、貧血を起こしやすくなります。症状が進むと、味覚障害や抑うつなどの症状が出るおそれもあります。ただし通常の食生活をしていれば、葉酸の不足はしにくいと考えられています。よって食事は三食しっかり摂るようにしましょう。
精神の不安定
葉酸が不足した場合、精神の不安定にもつながるといわれています。なぜなら、葉酸は脳の神経伝達物質の生成を促すはたらきがあるためです。
うつ病の患者には、葉酸が低下している場合が多いとの報告もあります。精神を安定させ、うつ病を予防するためにも、食事はバランスよく摂るようにしましょう。
動脈硬化
葉酸が不足すると、動脈硬化を発症しやすくなるため注意が必要です。葉酸は、血栓形成の危険因子であるホモシステインをメチオニンへと変換するはたらきを助けるといわれています。葉酸が不足した場合、血中のホモシステイン濃度が上昇することで動脈硬化を引き起こすリスクが高まります。
動脈硬化やその進行によって発症する脳梗塞などを予防するためにも、葉酸不足には注意が必要です。
胎児の神経管閉鎖障害
妊娠中の葉酸不足は、胎児の神経管閉鎖障害につながります。神経管閉鎖障害は、妊娠初期に起こる胎児の先天性異常のひとつです。葉酸不足などにより、脳や脊髄などのもとになる神経管がうまく作られないことなどが原因で起こります。
妊娠前からの葉酸の摂取によって神経管閉鎖障害のリスクは低減するといわれているため、妊娠を希望している方はサプリメントなども活用しながら葉酸を摂取しましょう。
葉酸の摂取推奨量
葉酸は妊活・妊娠中の方のみならず、すべての人にとって必要な栄養素です。
そこで、通常・妊活~産後まで、それぞれの場合の摂取推奨量について紹介します。
通常の摂取推奨量
葉酸の一日あたりの摂取推奨量は、12歳以上の男女ともに240μgです※1。葉酸は野菜や果物のみならず、穀物や肉類、魚介類などさまざまな食材に含まれます。よって多くの食材を組み合わせながらバランスよく食べるようにしましょう。
妊活~産後の摂取推奨量
妊活中から産後にかけての摂取推奨量もみてみましょう。妊活中や授乳中の葉酸の摂取推奨量は、通常よりも多い設定です。また、妊娠期によっても推奨量は異なります。・妊活~妊娠初期
- 妊娠中期~妊娠後期
- 出産後~授乳中
それぞれの葉酸の摂取推奨量を解説します。
妊活~妊娠初期の摂取推奨量
妊活中から妊娠初期の摂取推奨量は、食事からの摂取とは別に1日400μgです※1。
妊娠初期は、胎児の臓器や神経が形成される、とても大切な時期です。そのため妊娠初期の摂取推奨量が多くなっています。
食事だけで補うのが難しい場合は葉酸サプリの活用も検討してみましょう。サプリにはさまざまな種類があります。葉酸の含有量を確認し、摂り過ぎないよう注意してください。
妊娠中期~妊娠後期の摂取推奨量
妊娠中期から後期にかけての葉酸の摂取推奨量は、通常の240μgのほかに1日あたり240μgが目安となります※1。初期よりも推奨量が減るのは、胎盤も大きくなり、胎児の臓器や神経も完成しつつあるためです。
妊娠すると起こりやすい貧血の予防にも葉酸は役立ちます。貧血は転倒などにもつながるため、葉酸を摂取して貧血の予防に努めましょう。
出産後~授乳中の摂取推奨量
出産後の葉酸の摂取推奨量は、食事のほかに1日あたり100μgです※1。母乳は血液から作られています。そこで造血作用のある葉酸の摂取が必要といわれています。
出産後に貧血状態が続く方もいます。母乳から赤ちゃんに葉酸を届けるほか、自身の貧血を防ぐためにも、葉酸を摂取しましょう。
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栄養素 | 葉酸 400μg、ヘム鉄 5mg、ビタミンB1 1.4mg、ビタミンB2 1.5mg、ビタミンB6 0.6mg、ビタミンB1 22.9μg、ビタミンC 50mg、ビタミンD 25μg、ビタミンE 1.0mg、カルシウム 50mg、マグネシウム 144mg、亜鉛 3mg、パントテン酸 2.2mg、ナイアシン 1mg、乳酸菌 16.5mg |
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葉酸サプリは摂り過ぎに注意が必要
葉酸は誰にとっても必要な栄養素ですので、不足しないよう気をつける必要があります。食事のみで葉酸を摂る場合、基本的には過剰摂取の心配がありません。しかしサプリを活用する場合は、過剰摂取に注意が必要です。
葉酸の摂り過ぎにより、発熱・じんましん・かゆみなどの症状が起きる場合があります。摂取推奨量や耐容上限量に注意したうえで、葉酸サプリを活用しましょう。
参考文献
※1 厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)|1-6(2)水溶性ビタミン
※2 文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)
この記事の監修者
管理栄養士:栗城智子
大学卒業後、食品メーカーにて商品開発や品質保証の業務に従事し、管理栄養士を取得。特定保健指導やドラッグストア勤務において、人々の食事や健康、サプリメントに関する悩みに寄り添う。そのほか医薬品登録販売者、フードスペシャリスト、中級食品表示診断士、離乳食・妊産婦食アドバイザー、日本化粧品検定1級、アロマテラピーアドバイザーなどの資格を保有。食と健康について学びを続けている。現在は子育てをしながら管理栄養士ライターとして執筆や商品監修に携わる。
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