妊活中や妊娠初期は葉酸不足にならないように、食事やサプリメントなどで積極的に葉酸を摂取している人も多いでしょう。しかし、意識するあまり葉酸の過剰摂取になっている例も少なくありません。
葉酸は1日の摂取量の上限が決まっているため、基準を超えないように調整することが大切です。この記事では葉酸の過剰摂取での影響と合わせて葉酸の基本知識や、推奨摂取量、葉酸不足の原因や症状を解説します。
葉酸の役割
葉酸は葉物野菜に豊富に含まれる必須栄養素です。ビタミンB群に分類される水溶性ビタミンとして知られています。葉酸は、核酸やタンパク質の合成に関与して細胞分裂をサポートしたり、ビタミンB12と一緒に赤血球を作ったりする役割を担っています。
また最近の研究で、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患のリスク低減に葉酸が関与していることが分かっており、今後が期待されている成分です。
また、葉酸は妊娠初期の胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減にも有効であることが分かっています。神経管閉鎖障害は、脳や脊髄などの重要な臓器の元となる神経管が何らかの原因でうまく作られない病気です。「妊活中や妊娠初期に葉酸を摂りましょう」と言われているのはこのためです。
葉酸はほうれん草やブロッコリー、キャベツ、枝豆などに豊富に含まれており、副菜や汁物などで取り入れることで十分に葉酸を摂取できます。妊娠中だけでなく、健康維持のためにも葉酸の摂取を意識してみましょう。
葉酸を過剰摂取するとどうなる?
お酒を飲みすぎると体に影響が出るように、葉酸も摂りすぎると体に影響が出ることがあります。
まず、一口に葉酸と言っても、葉酸には食材に含まれる「食事性葉酸」とサプリメントに添加される「モノグルタミン酸型の葉酸」の2種類があります。食物から葉酸を吸収できるのは50%程度で、サプリメントは85%程度であることからサプリメントの方が吸収効率がよいでしょう。
しかし、妊活サプリなどで利用される葉酸の吸収効率は良いですが、配合量が多くマルチビタミンなどのサプリメントでは葉酸も配合されています。葉酸単体のサプリメントに妊活サプリ、マルチビタミンのように複数のサプリを同時に摂取している場合は、葉酸の摂取量が上限を上回ることがあるため注意が必要です。
葉酸は1日に摂取する上限量(耐容上限量)が決められています。成人している男女ともに29歳以下は900μg、30〜49歳は1,000μgです。
この上限量を超えた葉酸の摂取が続くと、発熱や吐き気、かゆみ、じんましん、下痢、不眠症などの症状などが報告されています。葉酸の過剰摂取が命に関わることはありませんが、健康維持の目的で葉酸を過剰に摂取して体調を崩してしまっては元も子もありません。必ず推奨摂取量を守るようにしましょう。
葉酸の1日の推奨摂取量
葉酸は不足しても摂りすぎても体に影響が表れます。そのためには適正量を摂取することが大切です。ここでは厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)を元に説明します。
(1日に必要な葉酸の量)
- 健康な成人男女:240μg
- 妊活中・妊娠初期:240μg+400μg(合計640μg)
- 妊娠中期・後期:240μg+240μg(合計480μg)
- 授乳期:240mg+100μg(340μg)
ここで重要になるのが、まずは食事から240μgの葉酸を摂取するということです。例えばゆでた野菜100gあたりでみると、ほうれん草では110μg、ブロッコリーは120μgとなっています。毎日の献立を工夫すれば十分に摂取できます。
葉酸はさまざまなサプリメントに配合されているため、複数種類のサプリメントを飲んでいる場合には過剰摂取のおそれがあります。まずは、食事で葉酸を摂りつつ、不足を感じるときは配合量を確認してサプリを摂取するようにしましょう。
参考
厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)
文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)
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葉酸を摂りすぎてしまったときはどうする?
葉酸の過剰摂取は発熱や吐き気などの症状を引き起こすことがありますが、葉酸そのものには毒性はないとされています。また葉酸は水溶性ビタミンであるため、摂り過ぎた分は尿として排泄されるため、葉酸の摂りすぎに必要以上に敏感になる必要はありません。
葉酸を摂りすぎてしまったと感じるときは、翌日の葉酸の量を少なくするなどして調節してみましょう。水溶性ビタミンのため、葉酸を摂取しない期間を設ける必要はありません。サプリを飲んでいる人は回数や量を減らしたり、サプリを止めて食事から葉酸を摂取したりするなどの工夫をしてみましょう。
毎日のように耐容上限量を超えるような摂取をするのは過剰症につながります。葉酸は体にとって必要な栄養素であるため、上手に付き合っていくことが大切です。
葉酸不足にも注意
葉酸の過剰摂取が気になる一方で、葉酸不足にも注意しましょう。これまで葉酸を摂り過ぎていたからと言って極端に葉酸の摂取を制限することも、体への影響が懸念されます。
葉酸不足はその名前の通り、葉酸を極端に制限したことで体に必要な葉酸が不足している状態です。葉酸が不足すると、正常な細胞分裂ができなくなったり、赤血球が作られなくなったりしてしまいます。
食事のバランスを意識して入れば葉酸不足になることはないと言われています。しかし、偏食傾向にある人や小食の人、極端なダイエットをしている人、過度な飲酒の機会が多い人などは注意が必要です。
症状
葉酸が不足すると、貧血症状が表れます。葉酸不足が原因で起こる貧血が「巨赤芽球貧血」です。葉酸が不足することによりDNAの合成が阻害されるため、正常な赤芽球を産生することができません。すると、巨赤芽球が産生されて、動悸や息切れ、めまい、ふらつき、疲労感といった症状が表れるのです。
これらの症状が出ている場合は、葉酸を摂取することで改善を図ることができます。巨赤芽球貧血は、特に機能が未成熟な子どもや、機能の低下している高齢者に多いです。しかし、近年では若い女性にも増えているため注意しましょう。
原因
葉酸が不足する原因には以下が挙げられます。
- 妊娠中
- 偏食、欠食、小食
- アルコール依存症
- 特定の病気や薬
など
妊娠すると胎児の発育に葉酸を使用するため、これまでの食生活では葉酸が不足することがあります。妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害のリスクが高まるため、厚生労働省では妊娠を希望する3か月前から葉酸を摂取することを勧めています。
また、偏食や欠食、小食などで葉酸を摂取する量が少ないと葉酸不足を招きやすくなります。特に若い人を中心にダイエットなどで極端に食事量を制限することで葉酸不足になっていることもめずらしくありません。
またアルコール依存症や特定の病気、薬の服用で葉酸が吸収されにくかったり、代謝の過程で葉酸を使用することで葉酸不足になったりすることもあります。
いずれも貧血のような症状があるときは、生活習慣や食生活を見直した上で、葉酸を摂取することが大切です。
まとめ
体にとって欠かせない栄養素であり、妊娠中は特に葉酸が重要になることから、つい葉酸を摂りすぎてしまうケースがあります。葉酸は水溶性ビタミンのため、余剰分は尿として排泄されますが、発熱や吐き気、かゆみなどの症状が表れることもあるため注意しましょう。葉酸サプリを使用するときは配合量を確認して耐容上限量以上に摂取しないようにしましょう。
この記事の監修者
管理栄養士:栗城智子
大学卒業後、食品メーカーにて商品開発や品質保証の業務に従事し、管理栄養士を取得。特定保健指導やドラッグストア勤務において、人々の食事や健康、サプリメントに関する悩みに寄り添う。そのほか医薬品登録販売者、フードスペシャリスト、中級食品表示診断士、離乳食・妊産婦食アドバイザー、日本化粧品検定1級、アロマテラピーアドバイザーなどの資格を保有。食と健康について学びを続けている。現在は子育てをしながら管理栄養士ライターとして執筆や商品監修に携わる。
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