葉酸は、細胞分裂や赤血球に関与するため妊婦だけでなく老若男女に必要な栄養素です。では一日にどのくらいの量を摂取すればよいかご存じですか?不足しても過剰に摂取してもダメ。
今回はそんな葉酸について解説します。この記事では葉酸の働きや一日の推奨摂取量、上限値、不足したとき・過剰に摂取したときに起こる症状などをまとめました。
葉酸の働き
葉酸はビタミンB群に含まれる栄養素です。葉物野菜やレバー、海産物などに豊富に含まれる水溶性ビタミンで、通常の食事をしていれば不足するのは稀だと言われています。
葉酸と聞くと、妊活中や妊娠中の女性が摂取するものというイメージを持つ人もいるでしょう。しかし、葉酸は次のような働きをするため老若男女問わず摂取したい成分です。
葉酸の働きは、核酸(DNA・RNA)やタンパク質の生合成を促して細胞分裂に関与しています。また、ビタミンB12と一緒に赤血球を作る「造血のビタミン」としての働きがあります。私たちの体は毎日たくさんの細胞分裂とアポトーシスを繰り返しているため、体の機能維持のためにも葉酸が必要なのです。
しかし、葉酸は水溶性ビタミンであるため、長期間体内に存在できません。そのため食事やサプリメントなどで毎日摂取することが大切です。
また最近の研究で、心筋梗塞や狭心症などの心臓の病気の予防に葉酸が関与していることが分かっており、今後が期待されている成分です。
葉酸の一日の摂取量
水溶性ビタミンである葉酸は、毎日3食バランスよく食べている人であれば、不足することはないと言われています。しかし、妊娠中の女性は葉酸の消費量・必要量が増えるため葉酸不足になりやすいです。そのため厚生労働省では食事にプラスして、サプリメントなどでの追加摂取を推奨しています。
ここでは厚生労働省が示す「日本人の食事摂取基準2020年版」を元に、一日に必要な葉酸の量を妊娠時期別に解説します。
成人している健康な男女
成人している健康な男女の場合に必要な一日の葉酸の量は240μgです。食材100gあたりの葉酸含有量の一例として、たとえば茹でたほうれん草は110μg、茹でたブロッコリーは120μgです。
またお米や海苔、納豆、肉類などさまざまな食材に葉酸が含まれています。そのため、葉酸の推奨摂取量を食材から摂取するハードルは低そうです。
しかし、お酒をよく飲む人や小食の人、ご飯を食べないときがある人は要注意です。お酒を飲む機会が多い人は代謝の過程で葉酸を使用するため葉酸不足になりやすいです。また食事量が少ないと葉酸が不足してしまいます。このような人はサプリで葉酸を取り入れるとよいでしょう。
妊活中・妊娠初期
妊活中や妊娠初期に一日に必要な葉酸の量は、基本量の240μgにプラスして400μgの合計640μgです。
これは、妊娠初期に胎児が発育する過程で起こる「神経管閉鎖障害」の予防を目的として設定されています。妊活中から多くの葉酸を摂取する理由は、妊娠に気付く前である妊娠超初期に胎児の脳や脊髄の基となる神経管が作られ、その際にたくさんの葉酸が必要になるためです。
妊娠中期・後期
妊娠中期・後期に一日に必要な葉酸の量は、基本量の240μgにプラスして240μgの合計480μgです。
妊娠中期になると胎児はますます大きくなり臓器の完成も近づいていきます。するとこれまで以上に栄養が必要になるためお母さんの血液量が増加します。血液量が増加すると、貧血を起こしやすくなることが分かっています。
貧血になると胎児の早産や発育不全を引き起こす可能性があるため、妊婦検診では血液検査をおこない、貧血を起こしていないかも医師は確認しています。妊娠中の貧血はおもに鉄欠乏によるものですが、まれに葉酸欠乏によるものがあります。そのため、妊娠中の貧血予防策として鉄分のみならず葉酸やビタミンB12もあわせて摂取しましょう。
授乳中
出産を終えた授乳期にも葉酸が活躍します。授乳期に一日に必要な葉酸の量は、基本の240μgにプラスして100μgの合計340μgです。
母乳は血液から作られており、低月齢のうちは母乳育児を安定させるために頻回授乳が必要です。葉酸は血液を作るため、量が不足していると母乳の質にも関わってきます。また産後の体の回復する時期には、いつも以上に細胞が活発に働くため葉酸が必要なのです。
葉酸の一日の上限量は?
葉酸は1日に摂取する上限量(耐容上限量)が決められています。成人男女では29歳以下は900μg、30〜49歳は1,000μgとなっています。
健康管理のために献立を工夫して葉酸の摂取量を増やすのは問題ありません。しかし、サプリメントを使って葉酸を摂取する場合には注意が必要です。
妊活サプリなどで利用される葉酸の吸収効率は良いですが、配合量が多くマルチビタミンなどのサプリメントでは葉酸も配合されています。葉酸単体のサプリメントに妊活サプリ、マルチビタミンのように複数のサプリを同時に摂取している場合は、葉酸の摂取量が上限を上回ることがあるため注意が必要です。
この上限量を超えた葉酸の摂取が続くと、体にとってよくありません。葉酸の過剰摂取が命に関わることはありませんが、健康維持の目的で葉酸を過剰に摂取して体調を崩してしまっては元も子もありません。必ず推奨摂取量を守るようにしましょう。
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葉酸不足・過剰摂取するとどうなる?
では葉酸が足りなかったり摂りすぎたりすると体にはどのような影響が表れるのでしょうか?それぞれの症状を解説します。
葉酸不足
葉酸が不足すると正常な細胞分裂をすることができません。また、正常な赤血球が作れなくなるため貧血を起こします。葉酸不足が原因で起こる貧血を「巨赤芽球貧血」といい、以下のような症状が特徴です。
- 動悸
- めまい、ふらつき
- 疲労
- 息切れ
- 委縮性胃炎
- ハンター舌炎(味覚障害・舌の痛み)
など
重症化すると手足のしびれや思考力の低下、うつ症状などの神経症状が現れることがあります。
過剰摂取
葉酸を摂りすぎてしまい耐容上限量を超えた摂取が続くと、発熱や吐き気、かゆみ、じんましん、下痢、不眠症などの症状などが起こることが報告されています。葉酸そのものに害はなく、摂りすぎてしまった分は尿として排泄されるため、心配し過ぎる必要はありません。
葉酸を摂りすぎて心配なときは、葉酸の量を調節しましょう。これまでサプリメインで葉酸を摂取していた場合には、サプリで摂取する量を減らして食事から摂取する量を増やします。特にサプリは食事からの摂取に比べると吸収性が良いため、複数のサプリメントを飲んでいる場合には過剰摂取になりがちです。
妊娠初期の神経管閉鎖障害の予防のために、複数のサプリを使い分けている人は葉酸の合計量を確認しましょう。推奨摂取量の640μgを大幅に超えている場合には、服用するサプリメントの数を減らして調節してみてください。
まとめ
毎日朝昼晩しっかりとご飯を食べる人であれば葉酸が不足することはないと言われています。葉酸は私たちの身近な食品に豊富に含まれており、副菜や汁物などを工夫すれば、一日の推奨摂取量を十分に満たすことができます。サプリメントをプラスするときは、耐容上限量に注意して、推奨量の範囲で摂取することが大切です。本記事を参考に葉酸を取り入れた献立を作ってみませんか?
この記事の監修者
管理栄養士:栗城智子
大学卒業後、食品メーカーにて商品開発や品質保証の業務に従事し、管理栄養士を取得。特定保健指導やドラッグストア勤務において、人々の食事や健康、サプリメントに関する悩みに寄り添う。そのほか医薬品登録販売者、フードスペシャリスト、中級食品表示診断士、離乳食・妊産婦食アドバイザー、日本化粧品検定1級、アロマテラピーアドバイザーなどの資格を保有。食と健康について学びを続けている。現在は子育てをしながら管理栄養士ライターとして執筆や商品監修に携わる。
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